例えば、スマートフォンで求人を見つけた人が、履歴書を添付して応募しようとします。ところが、次の画面では勤務先、在籍期間、仕事内容をもう一度入力するよう求められます。

採用する側は必要な情報を集めているつもりでも、応募する側には「さっき送った内容を、もう一度?」と見えます。1つの「職歴」欄が、履歴書を書き直す作業になることもあります。

履歴書を添付した求職者が、スマートフォンの応募フォームで同じ職歴を再入力するよう求められ、困惑している説明用イラスト。
履歴書の内容とフォームの質問を照合すると、項目数だけでは分からない重複を見つけられます。

応募フォームを見直すときは、短くする前に、最初の連絡と選考で何を判断するかを決めます。その判断に必要な質問を残し、書類で受け取れる情報や後で聞ける質問を整理します。

履歴書を添付したあと、どこまで入力し直させていますか

ソフトウェア開発部門を率いる仕事を探していたAndrew Wegnerは、2022年9月の記録で、自身の応募の5件に1件は履歴書の内容をほぼ全面的に入力し直し、10件に9件は何らかの修正が必要だったと報告しています。本人の転職活動の記録

Wegnerの記録には応募総数が示されておらず、1人の経験を日本の採用全体の割合には置き換えられません。自社のフォームに当てはめるなら、添付した履歴書を手元に置き、次の操作が発生するかを確かめます。

応募者の操作 そのときの負担 自社で確認すること
履歴書と同じ職歴をもう1度入力する 勤務先や在籍期間をたどり、記載漏れがないか確認する 添付書類だけでは担当者が確認できない事情があるか
履歴書から取り込まれた内容を修正する 書類と見比べ、違う箇所を探して直す どの欄で修正が必要になるか

項目が1つでも、これまでの勤務先と仕事をすべて書くよう求めれば、応募者は経歴を思い出して整理する必要があります。フォーム設計を解説するNielsen Norman Groupも、入力には指を動かす手間に加え、質問を理解し、記憶をたどり、答えを選ぶ作業があると説明しています。フォームで生じる考える負担の解説

たとえば質問を「職歴」から「最近勤めた会社と、そこで担当した仕事」に変えると、聞いている範囲は伝わりやすくなります。それでも同じ情報が履歴書に書かれていれば、転記の手間は残ります。質問の言葉を直したあとも、添付書類との照合が必要です。

重複している欄を残すか決めるときは、その回答を誰がどの判断に使うのか、応募時点で必要なのかまで確認します。

最初の応募で聞く質問に、使い道はありますか

下の表は、接客スタッフを募集する場合の架空の設計例です。

項目 使う判断 必要な時点 扱いの案
氏名・連絡先 応募者への連絡 最初に連絡するとき 初回に聞く
勤務可能日・時間帯 募集シフトに合うか 選考を始める前 初回に聞く
詳しい職歴 担当業務に合う経験があるか 書類を確認するとき 履歴書にあれば添付で受け取る
志望動機 応募理由と仕事への理解 面接するとき 面接で詳しく聞く候補

自社で質問の使い道を決めるときは、採用担当者が回答を見て何を判断するのかまで書きます。「応募者を知るため」だけでは、初回に必要な理由が分かりません。使う場面を説明できない項目は、必須項目から外すか、必要になる時点で聞くことを検討します。

後で聞く質問には、聞く場面と担当者を決めておきます。面接へ移した質問を誰も確認しなければ、選考に必要な情報が抜けてしまいます。添付書類で受け取る案を選ぶ場合も、担当者がその情報を確認できるかを確かめます。

接客スタッフ募集の設計例。最初の応募で連絡先と勤務できる時間を聞き、面接や選考で詳しい職歴と志望動機を確認する。
接客スタッフ募集を想定した設計例。必要な資格や選考方法によって、初回に聞く内容は変わります。

資格が必須の職種では、応募条件を満たすか判断するため、資格の有無を初回に確認する必要があります。

残すと決めた質問は、応募者が何を答えればよいか分かる書き方へ直します。社内で用途が決まっていても、その事情は質問を読む応募者には伝わらないためです。

質問を2つに分けるほうが、答えやすいこともある

「勤務可能日/時間帯」という1欄に、曜日と時間帯をまとめて書いてもらうと、応募者はどこまで答えればよいか迷うことがあります。必要な勤務条件を尋ねるなら、欄の数に加えて、何を答える欄なのかも確かめます。

改善前 改善案 狙い
「勤務可能日/時間帯」を1欄で尋ねる 「勤務可能な曜日」「勤務可能な時間帯」の2欄で尋ねる 答える内容を分け、担当者が勤務条件を読み違えにくくする
記入例や説明を欄の中だけに置く 記入例や説明を欄の外に固定する 入力中も説明を見返せるようにする

表は勤務条件を聞くための設計例です。曜日や時間帯の選択肢は、実際に募集する勤務条件に合わせて決めます。

Nielsen Norman Groupは、1つの質問で「役に立ったか」と「使いやすかったか」をまとめて尋ねると、どちらについての回答なのか分かりにくくなる例を挙げています。また、入力を始めると消える欄内の説明に頼らず、質問名と説明を欄の外に置くよう勧めています。フォーム設計の記事

同記事は、必要な書類を入力開始前に知らせることも勧めています。履歴書などの提出が必要なら、最初に案内し、受け付けるファイル形式と容量も実際の仕様を記します。

質問や説明を直したら、応募者が回答に迷わず入力できるかを、次章の操作確認で確かめます。

入力のしやすさと、面接への進み方を分けて見る

質問や説明を直したら、スマートフォンで求人を見つけてから、書類の添付、入力、送信までを通して確かめます。どの欄で手が止まるか、説明を探すために前の画面へ戻るかを見ると、項目数では分からない負担が見えてきます。送信後に担当者へ応募が届くところまでが確認の範囲です。

例えば、最後の画面で初めて履歴書の提出を求められるフォームでは、応募者が書類を用意するために入力を中断することがあります。最初の画面に必要書類を示す案なら、準備してから入力を始められます。欄の数が同じでも、途中で止まる理由を取り除ける設計例です。

一方、接客スタッフの募集で勤務できる曜日まで省くと、担当者は応募後に連絡して、募集シフトに合うかを聞き直すことになります。入力が短くなったぶん、選考前のやり取りが増える例です。質問を残すかは、応募者の手間と、その回答が選考で必要になる時点を合わせて考えます。

採用広告を扱うAppcastも、応募件数や応募1件当たりにかかる費用だけでなく、選考・面接への進み方と担当者の作業時間を見る考え方を示しています。Appcastの解説

変更前後の結果を見るときは、同じ長さの期間で、入力を始めた人のうち何人が送信し、応募者のうち何人が面接へ進んだかを比べます。応募から何日後まで面接への進み方を確認するかも揃え、求人条件や広告の出し方の違いを確認します。応募が増えても、面接へ進む割合が下がり、担当者の確認の手間が増えているなら、初回に残す質問を見直す理由になります。