LPや会社案内の制作では、サービス内容を伝えようと図を入れたものの、要素が多くて読みにくくなった、という場面があります。矢印があちこちに伸び、社内で使っている呼び名がそのまま並び、スマートフォンで開くと文字がつぶれて読めない。図を足すほど説明したつもりになる一方で、初めて見る人には、何がどうつながっているのか分からないままになります。
この記事では、図を描き始める前に伝えたい関係を一つに絞ることから始め、読者が知っている言葉への置き換え、配置と矢印による読む順番の作り方、図に添える短い説明、スマートフォンでの確認までを順に整理します。図を何枚置くかという話ではなく、一枚の図を読める形にするための考え方を扱います。
図解にする前に、文章で一文にまとめる
図を描き始める前に、まず「この図で伝えたい関係は何か」を一文で書きます。たとえば「申し込みから初回面談までの流れ」と書ければ、図に置く要素と順番が決まります。一文にできないときは、伝えたいことが複数混ざっています。文章の段階で分けておくと、図も増やしすぎずに済みます。
関係の種類を選ぶ
一文で表す関係は、大きく流れ・比較・構成の三つです。ここでは、説明のために架空のサービスを想定した例で考えます。
流れ
手続きや時間の順序を示す関係です。「申し込み、確認、初回面談」のように、読者が次に何が起きるかを知りたいときに選びます。
比較
二つ以上の選択肢の違いを示す関係です。「対面とオンラインで変わる支援範囲」のように、どちらを選ぶか迷う場面で使います。
構成
全体がどんな要素で成り立つかを示す関係です。「サービスが相談・実行・振り返りの三つで成り立つ」のように、範囲を伝えたいときに選びます。
| 関係 | 一文の例 | 図に置くもの |
|---|---|---|
| 流れ | 申し込みから初回面談までの順序 | 各段階の名前と、矢印でつないだ順番 |
| 比較 | 対面とオンラインで変わる支援範囲 | 同じ観点で並べた二つの列と、違う点の印 |
| 構成 | サービスを支える三つの役割 | 中心の要素と、それを囲む要素のまとまり |
一枚に一つの関係だけ置く
一つの図に流れと比較を同時に入れると、矢印がどこへ向かうのか分かりにくくなります。伝えたい関係を一つ選び、別の関係は別の図か文章に分けます。図を増やすのではなく、一枚の主張を一つにすると、初めて見る人も読み進めやすくなります。
- 一文に、主語と述語が一つずつ収まっているか
- 「〜と〜」と並べる要素が増えていないか
- その一文だけで、図を見なくても関係が伝わるか
描く要素を、読者が知っている言葉に置き換える
図に置く言葉は、社内で通じるかどうかではなく、初めて見る人に通じるかどうかで選びます。たとえば「オンボーディング」と書くより「使い始めの設定」と書いたほうが、読む人は自分の作業を思い浮かべられます。ここでは説明のために、架空のサービスを想定した例で考えます。
初めて見る人に通じるか確かめる
要素の名前を書き出したら、そのサービスを知らない人に名前だけを見せ、「何をするものか」を言い換えてもらいます。すぐに言い換えられなければ、言葉が抽象的すぎます。「最適化」「ソリューション」「ワンストップ」は意味の幅が広く、人によって思い浮かべるものが変わります。動作や対象が分かる言葉に直します。
| 社内で使っている言葉 | 読者に伝わる言葉 | 置き換えの意図 |
|---|---|---|
| オンボーディング | 使い始めの設定 | 最初に何をするのかが伝わる |
| エスカレーション | 担当者だけでは決められないときの相談 | 誰が何をするのかが伝わる |
| MAツール | メール配信をまとめて行う道具 | 機能と用途が想像できる |
略語を残す場合の説明
製品名や業界で定着した略語を残すときは、図の中に説明を詰め込まず、直後の一文か注記で意味を添えます。括弧書きを図の中に重ねると文字数が増え、スマートフォンでは読みにくくなります。説明は初出の一回だけにし、以降は同じ呼び方で統一します。
- 図に置く要素を書き出す
- 読者が行う動作の言葉に直す
- サービスを知らない人に意味を言い換えてもらう
- 要素の名前だけで、何が起きるか想像できるか
- 同じ意味の言葉が二種類使われていないか
- 説明を足さないと分からない言葉が残っていないか
配置と矢印で、読む順番を決める
図の中の要素を、読者はどの順番で読むのか。配置を決める前に、まず読む順番を決めます。日本語の文章と同じく、目は左から右へ、次に上から下へ動きます。横に並べれば流れとして、縦に積めば手順として読まれます。同じ要素でも、並べ方を変えるだけで伝わる関係が変わります。
矢印を減らす
要素のつながりをすべて矢印にすると、どれが主な流れなのか分からなくなります。矢印は「次へ進む」ことを示す記号なので、順序がある場所だけに使います。並列の関係や単なる関連は、矢印ではなく番号や囲みで表します。一つの図では一続きの流れを示し、分岐を描く場合も、分岐した先の読み順が一通りになるようにします。
- 矢印の先が、次に読む一つの要素を指しているか
- 進む向きと戻る向きの矢印が、同じ図に混ざっていないか
- 番号や囲みで代えられる箇所に、矢印を使っていないか
囲みと余白でまとまりを作る
同じ役割の要素は近くに置き、囲みでまとめます。余白は間隔を空けるためではなく、グループの切れ目を示すために使います。同じまとまりの中は狭く、別のまとまりとの間は広くすると、線を引かなくても関係の濃さが伝わります。囲みの入れ子は一段までにします。囲みが重なると、どこまでが一つのまとまりなのか分からなくなります。
- 同じまとまりの要素どうしの間隔が、グループをまたぐ間隔より狭いか
- 囲みの入れ子が一段を超えていないか
次の表は、配置の違いで読み方がどう変わるかを整理したものです。内容は架空のサービスを想定した例で、実際の制作実績ではありません。
| 並べ方 | 読まれる順番 | 向く内容 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 左から右へ横一列 | 左端から右端へ一度に読む | 申し込みから初回面談までの流れ | 要素が4つを超えると、スマートフォンで折り返して順番が崩れる |
| 上から下へ縦一列 | 上から下へ順に追う | 手続きの段階、時系列の記録 | 画面が長くなり、全体像が見えにくくなる |
| 中央に置き、周りを囲む | 中心から周囲へ広げる | サービスを支える三つの役割 | 囲みが重なると、どれが中心か分からなくなる |
| 左右に二列で対比 | 同じ行を左と右で見比べる | 対面とオンラインの支援範囲の違い | 行の数がそろうと比べやすいが、片側だけ長いと視線が止まる |
図を描き終えたら、初めて見る人に「どこから読んだか」を聞きます。最初に目が向いた場所が、伝えたい出発点と一致していれば、配置は機能しています。一致しないときは、文字や色を足す前に、要素の位置を入れ替えてみます。
図のそばに、読むための短い説明を置く
図を置いただけでは、読者はどこを見て何を読み取ればよいのか迷います。図の近くに短い説明を添え、示したい関係を言葉でも確かめられるようにします。ここでは、キャプションと本文の役割の分け方と、図を残すか削るかの判断を扱います。
キャプションに書くこと
キャプションは図の内容を長く説明する場所ではなく、その図が何を示しているかを一文で伝える場所です。「申し込みから初回面談までの流れ」のように、対象と関係を書きます。本文は、図から読み取れる理由や補足を説明します。図、キャプション、本文の順に置くと、読者は図を見たあとで説明へ進めます。
| 位置 | 置くもの | 役割 |
|---|---|---|
| 図の上 | 見出し | これから何の図かを示す |
| 図の直下 | キャプション | 図が示す関係を一文で言い切る |
| キャプションの下 | 本文 | 読み取れる内容と補足を説明する |
- 図が何の関係を示しているかを一文で書く
- 図の中の言葉とキャプションの言葉を食い違わせない
- 本文で説明できる内容までキャプションに詰め込まない
図を削る判断
説明を足しても伝わらないときは、図そのものが役割を果たしていない可能性があります。本文を読まないと意味が分からない図や、文章で十分に伝えている内容をなぞる図は、削る候補です。図を残すのは、関係や順序を一目で示すことに意味がある場合です。
- キャプションを読まないと意味が分からない図は、要素か配置を見直す
- 本文と同じ説明を繰り返している図は、どちらか一方にまとめる
- 削っても文章が通じる図は、残す理由を言葉にできない
- 伝えたい関係を一文にする
- キャプションで関係を言い切る
- 本文で補足を説明する
- 削っても通じるか確かめる
スマートフォンで見て、伝わるか確認する
パソコンの画面で図を仕上げると、要素が収まって見え、確認を終えた気になります。しかしスマートフォンで開く読者もいます。画面幅が狭くなると図全体が縮小され、注記や矢印のそばの文字から読めなくなります。公開前に実機で確かめる項目を整理します。
色覚に頼らない見分け方
色の違いだけで段階や分類を示すと、色の見え方が異なる読者には関係が伝わりません。色は補助として使い、形・位置・番号・言葉でも区別できるようにします。
- 段階を示すときは、色に加えて「1」「2」「3」の番号を入れる
- 線の種類や塗りの有無でも違いが分かるようにする
- 白黒に変換した画面で、要素の区別が残るか確かめる
たとえば、架空のサービスで「申し込み」「確認」「面談」の三工程を色分けしたとします。色を外したときに区別がつかず、矢印の順番も追えないなら、番号か工程名の位置で読み取れる形に直します。これは説明のための例で、特定の画面ではありません。
画像にしたときの文字の粗さ
図を画像として書き出すと、画面上では読めていた文字が粗くなります。書き出しサイズを上げるか、文字は画像に焼き込まずHTMLのテキストとして重ねると、拡大しても輪郭が保たれます。写真の上に重ねる場合も、背景の明るさが変わる境目に文字を置かないようにします。
| 画面幅の目安 | 読めなくなる箇所 | 直し方の例 |
|---|---|---|
| 360〜390px(スマートフォン) | 図の中の注記と、矢印のそばの短い文字 | 注記を図の外へ出し、本文かキャプションに移す |
| 768px前後(タブレット) | 横に並べた四つ以上の要素と、折り返した矢印 | 縦一列に組み替えるか、要素を二段に分ける |
| 1024px以上(パソコン) | 全体は収まるが、文字が小さくても気づきにくい | 実機の幅でも拡大せず読めるか確かめる |
| すべての画面幅 | 図が画面の横幅を超え、横スクロールが発生する箇所 | 要素を減らすか縦に組み替え、横スクロールせずに全体を見られるようにする |
- 実機の幅で開く
- 拡大せずに読めるか確かめる
- 白黒表示で区別を確認する
- 画像の文字の粗さを見る
確認の基準は、拡大せずに読めるかどうかです。読めない箇所が見つかったら、文字を大きくする前に、要素を減らすか注記を外へ出します。最後に、初めて見る人が一度で関係をつかめるかを見ます。




