AIで議事録はできた。でも、次の会議で「誰が、いつまでにやるんだっけ」と聞き直している。文章がきれいにまとまっていても、その後の仕事で使われなければ、担当者には確認作業が増えただけと感じられます。

「AIを使ってください」と呼びかける前に、会議のどこで使い、何を残し、誰が確かめるかまで決める。導入した道具を日常の仕事へつなぐには、その具体化が必要です。

会議の記録を見比べ、担当者と期限を確かめて日々の仕事へ反映するチームの説明用イラスト。

国内調査で、導入した会社にも残っている課題を見る

中小機構が2026年3月に公表した中小企業のAI等の利活用に係る実態調査では、AIを全社的に導入した57社のうち23社、40.4%が、従業員の活用が進まないことを運用課題に挙げています。導入済みであることと、仕事で活用されていることは、同じではありません。

この調査は2025年11月17日〜12月12日に行われ、有効回答は1,668社です。対象のAIには生成AIのほか、画像認識や需要予測なども含まれます。40.4%は表10の全社導入企業57社に対する複数回答の割合で、全中小企業の40.4%が使っていないという意味ではありません。

この数字から、自社で使われない理由までは分かりません。「難しくて使えない」のか、「使っても仕事が終わらない」のか、「必要な資料を渡せない」のかで、次に直すものが変わります。

社員が困っている場面 確認する実物 対応の例
毎回、何を頼むか考え直す 日常の依頼文と作業手順 同じ仕事で繰り返す指示を保存する
議事録は出るが、誰が動くか分からない 議事録と、その後の担当者の記録 担当者と期限の確認を完成条件に含める
会議ごとに資料の場所を探す 参照している資料と保存先 使う資料と置き場所を決める
事実の確認が重く、結局書き直す 元の記録と修正した箇所 AIに任せる範囲を狭めて試し直す

使わない社員の人数だけを数えるより、使おうとした仕事の実物を見ると、次に何を直すかを具体的に考えられます。

議事録を作った後の仕事まで、1つの手順にする

最初の対象を「社内の仕事全般」にすると、必要な資料も完成条件もそろいません。ここでは「社内会議の記録から、決定事項・担当者・期限を整理し、参加者の確認後に仕事の管理へ反映する」までに絞ります。

使う資料と、完成の条件を先に決める

会議の記録をAIへ渡す前に、会社で利用を認めたAIと、共有できる資料を選びます。使うのは会議のメモと必要な資料です。録音を使う場合は、参加者への案内と社内での扱いを確認し、音声を記録する手順も先に決めます。

できた議事録は、参加者が決定内容を確認してから共有先へ保存します。AIが仕事の管理表へ直接反映するか、人が反映するかも先に決めておきます。最初の試行では、人が確かめた内容だけを反映する形にすると、確認範囲を選びやすくなります。

議事録から、担当者が動ける記録へ
  1. 1
    会議のメモを渡す使ってよい資料と依頼の内容をそろえる
  2. 2
    決定と未決定を分ける担当者や期限がない箇所は推測しない
  3. 3
    参加者が確認する内容・担当者・期限を元の記録と照合する
  4. 4
    仕事の管理へ反映する決まった内容を保存し、未決定は確認へ戻す
導入後の試行に使う手順例。導入効果を実測した図ではありません。

「検討する」と「実施する」を混ぜない

以下は、手順を説明するために作った会議メモです。実際の社内会議や支援実績ではありません。

サービスページの相談案内を短くする。田中さんが来週水曜までに案を作り、鈴木さんが確認する。広告費を増やす案も出たが、金額は次回に判断する。採用ページの修正担当はまだ決まっていない。

このメモを、次のように依頼します。

この会議メモだけを使って、決定事項、担当者、期限、確認が必要な事項を整理してください。
「実施すると決めたこと」と「案として出たこと」を分けてください。
メモにない担当者や日付は推測せず、「未決定」と書いてください。
「来週水曜」のような日付は、会議日がない状態で年月日に変えないでください。
文章の読みやすさより、元のメモにない決定を追加しないことを優先してください。

読み手が確認する完成例は、次の形です。AIの実出力を転載したものではなく、このメモに合わせて作った記載例です。

内容 決定状況 担当者・確認者 期限・次の確認
相談案内の文を短くする 実施する 田中が案を作り、鈴木が確認 来週水曜。具体的な日付は会議日を確認して記入する
広告費を増やす 案の段階 判断する担当者は未決定 金額は次回判断。次回会議の日付も確認する
採用ページを修正する 担当を含め要確認 未決定 期限も未決定。仕事へ反映する前に確認する

「広告費を増やす案」が出ただけなのに、実施する仕事として登録すれば、会議で決まっていない行動を始めてしまいます。議事録の出来を判断する基準には、文章の自然さに加えて、決定と提案の区別を含めます。

7日間の試行で、作成から確認までを比べる

導入後の最初の試行は、短い期間で、対象を1種類の会議に限定できます。次の表は、週に複数回の会議があるチームを想定した試行計画です。このとおりに運用すれば定着するという実績ではありません。会議の回数が少ない会社なら、必要な回数を比較できる期間へ伸ばします。

日 行うこと 残す結果
1日目 対象の会議、使う資料、確認する人、保存先を決める 1つの仕事の手順と完成条件
2日目 従来の方法で議事録を作り、確認を終える 完成した議事録と作成・確認時間
3日目 同じ種類の会議でAIを使い、参加者が確認する AIの案、確認後の記録、かかった時間
4日目 間違い・未決定・書き直した内容を見比べる 誤りの箇所と、直すべき指示や資料
5日目 指示を直し、次の会議で試す 修正前後の指示と、残った問題
6日目 別の担当者が同じ手順で使えるか確かめる 説明が必要だった操作と保存先の迷い
7日目 完成までの負担と記録の正確さを評価する 続ける範囲、直す箇所、使わない範囲

生成時間だけで、短縮したと判断しない

従来は作成20分と確認5分で25分かかったとします。AIの案が2分でできても、資料の準備10分と確認・修正15分がかかれば、合計27分です。これは架空の計算例であり、2分になったことだけでは仕事が早くなったとは言えません。

比較するときは、会議の長さ、議題数、決定事項の複雑さを確認します。内容の違う2回の会議を比べた結果を、そのままAIの効果と決めつけません。初回だけに必要な設定時間と、毎回かかる準備・確認の時間も分けて記録します。

次の担当者も使える状態で、定着を確かめる

最初の担当者だけが詳しい依頼文を作れる状態では、その人が休むと元の作業へ戻るかもしれません。別の担当者が同じ資料と保存した指示を使い、内容の確認まで進められるかを確かめます。

利用回数だけでなく、実際の会議で繰り返して使われ、担当者と期限を確認した記録が仕事の管理へ反映されたかを見ます。「AIの利用を増やす」ことと「会議後の仕事を進める」ことを、同じ成果として扱わないようにします。

社員が直した理由を、次の手順へ反映する

誤った議事録を人が直すだけで終えると、同じ依頼を次回も使い、また同じ確認が必要になります。残すのは正しい文章だけでなく、どこを何と比べて直したかです。

見つかった問題 手順に反映する変更
提案を決定事項にした 「実施すると決めた内容だけを決定欄へ入れる」と指示する
メモにない担当者を入れた 未記載は「未決定」と残し、確認担当へ戻す
古い資料を基に期限を補った 今回の会議メモと、使う資料の版を指定する
保存場所を毎回探す 確認後の記録を置く場所と名前の付け方を決める

操作に毎回迷うなら、その操作を練習する余地があります。確認負担が重いなら、AIに任せる範囲を「決定事項の候補を抜き出す」まで狭める選択もあります。議事録全文の作成にこだわらず、同じ条件で比較できる仕事から、続ける範囲を決めます。

研修の内容や発注先を見直したい場合は、AI研修を受けても仕事で使えないときの考え方で、学ぶ操作と会社側で用意する資料・判断を整理しています。本記事は、導入した後の日常業務で使われ続ける仕組みを扱っています。

株式会社ありがとうのAI導入支援では、対象の仕事と資料を確認し、AIに任せる範囲、内容を確認する担当者、使い続ける手順を整理します。導入したAIが使われていない場合も、今の仕事の実物を材料に相談できます。