社内の担当者から、AIで下書きした会社紹介文が届いた。読みやすく整っているし、目立つ誤りも見当たらない。それでも、そのまま公開していいのかと手が止まる。直すべき箇所を指摘しようにも、どこから見ればよいか分からず、読みやすさの印象に引かれて確認の順番が定まらないまま、公開の日だけが近づいていく。そんな状況で判断を任されることがあります。
この記事では、AIが書いた紹介文や会社紹介の下書きを確認する立場になったときに、文章の上手さより先に見ておきたい五つの観点を整理します。確認の順番と役割を決めているか、書かれていることが事実として扱えるか、誰の言葉として書かれているか、自社にしか書けない内容が残っているか、そして確認したことをどう記録して次の依頼に生かすか。読み終えたときに、公開へ進むか戻すかを、自分の判断で説明できる状態を目指します。
文章の上手さより先に確かめること
下書きが読みやすく整っていると、内容まで確かめた気持ちになりやすくなります。しかし、読みやすさと正しさは別のものです。読みやすさは、文の長さやつながりを見る確認です。正しさは、書かれたことが自社の事実と合っているかを見る確認です。同じ画面を眺めていても、見ている場所が違います。先に内容を確かめ、そのうえで表現を整える順番にすると、直した文が事実から離れることを防げます。
読みやすさと、正しさは別に確認する
事実に関わる記述へ先に印を付けると、確認は進めやすくなります。数字、実績、商品の仕様、提供の条件、お客さまの発言。これらは文章の調子ではなく、社内の記録や担当部署で確かめる対象です。たとえば「多くのお客さまに選ばれています」という一文は、読みやすくても、そのままでは事実として扱えません。根拠となる記録があるかを確認し、無ければ表現ごと外すか、書ける範囲に狭めます。事実を直した後に、語順や言い回しを整えます。
確認する人と、公開する人を決めておく
確認する人と公開する人を決めておくと、止める判断が濁りません。読みやすさを見る人、事実を確かめる人、公開の最終判断をする人が同じでも、役割としては分けておきます。確認の途中で見つかった未確認の項目は担当者へ戻し、公開の可否を決める人がその状態を知ったうえで判断します。誰が何を見たのか分からないまま公開の日を迎えると、後から問題が見つかったときに、確認の順番そのものをたどり直すことになります。
- 下書きを受け取る
- 数値・実績・仕様を社内の記録と照合する(未確認なら止める)
- 引用を元の記録と照らし、誰の言葉かを確かめる(確認できなければ外す)
- 自社しか書けない内容かを確認する(材料がなければ削る)
- 修正理由と確認した相手を記録する
- 公開の可否を判断する
事実として書かれていないかを見る
確認の順番と役割を決めたら、まず書かれている内容が事実として扱えるかどうかを見ます。AIの下書きは、文章の流れを整えるために、依頼文になかった数字や条件を補うことがあります。読みやすく通っていても、社内の記録と照合するまでは事実ではありません。ここでは、確認が必要になりやすい記述を二つに分けて整理します。
数値・実績・受賞の扱い
導入社数、売上、創業年、受賞歴。こうした記述は、文章の調子ではなく、社内の記録や一次資料で確かめる対象です。確認するときは、数字そのものだけでなく、集計の範囲、時点、単位、年度まで戻ります。桁が合っていても、対象が全社なのか一部の商品なのかで意味は変わります。社内で確認できない場合は、表現を弱めて残すのではなく、その記述ごと外すか、書ける範囲に狭めます。
受賞は、賞の正式名称、主催、年度、対象となった商品や取り組みまで揃えて初めて公開できます。記憶や過去の資料から補わず、当時の案内や主催者の発表で確かめます。
商品の仕様と提供条件
仕様と提供条件は、読み手が問い合わせや購入を決める材料になります。サイズ、素材、対応時間、保証、送料、提供地域、開始日。誤りがそのまま行き違いになるため、最新の版がどれか、どの部署が正本を持っているかを確認します。手元の資料が古いこともあるので、日付もあわせて見ます。
「〜と思います」に直しても残る問題
断定を避けて「〜と思います」に変えると、文の角は立ちにくくなります。しかし、確かめていない事実が書き手の推測として残るだけで、読み手が事実と受け取る構図は変わりません。たとえば架空の商品で「送料は全国一律だと思います」と書いても、読み手が知りたいのは送料の条件そのものです。確認して一文で書くか、その一文を外します。推測のまま公開すると、後から訂正する範囲も広がります。
次の表は、確認が必要になりやすい表現の例です。社名や数値は架空のもので、実在の実績ではありません。
| 表現の例 | 確認する内容 | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 「累計1,000社以上に導入」 | 集計の範囲、時点、重複の扱い | 営業企画・集計担当 |
| 「〇〇賞を受賞」 | 賞の正式名称、主催、年度、対象 | 広報・受賞当時の担当 |
| 「最短3日で納品」 | 起算日、対象地域、受注条件 | 物流・受注管理 |
| 「業界No.1の性能」 | 比較した製品、出典、調査時点 | 商品企画 |
| 「お客さまの9割が満足」 | 調査の実施日、回答数、質問文 | マーケティング |
| 「〜と思います」 | 誰の推測か、確認済みか | 書き手本人と確認担当 |
誰の言葉かを確かめる
事実の確認を終えたら、次に見るのは、その一文が誰の言葉なのかです。AIの下書きは、お客さまの感想や社内の声を自然な文章へ整える過程で、言っていない一言を補うことがあります。文章としては通っていても、発言者が変わってしまえば、公開後に取り消すのは難しくなります。ここでは、引用と自社の意見を分けて確かめる手順を整理します。
お客さまの声を、AIが補っていないか
お客さまの声として紹介する文は、実際に届いた言葉と照らし合わせます。手元にあるのは、アンケートの自由記述、メール、インタビューのメモ、レビューへの返信などです。元の文と並べたとき、意味が同じでも言葉が置き換わっていれば、それは要約です。要約として載せるのか、発言として引用するのかを決め、引用なら元の言葉のまま、前後の文脈ごと確認します。
- 元の記録に残っている言葉か、記録のない記憶や伝聞ではないか
- 語尾や言い回しを整えた結果、本人が言っていない意味になっていないか
- 紹介の許可を、誰が、いつ、どの範囲で得ているか
- 掲載する名前や所属を、本人の希望どおりに書いているか
- 一つの声を、複数の人の意見のように見せていないか
社内の意見と外部の評価を混ぜていないか
社内の担当者が言ったこと、社外の人が評価したこと、会社としての見解。この三つは、同じ一文に混ざりやすいものです。「現場の声として、使いやすさが評価されています」と書いたとき、前半は社内、後半は外部の評価のように読めますが、実際にはどちらも社内の受け止めかもしれません。主語が誰かを一文ずつ確かめ、混ざっている文は分けます。
次の表は、引用を整理するときの欄の例です。社名・商品名・発言は架空のもので、実在の声ではありません。
| 引用文の例 | 誰の言葉か | 確認するもの | 公開時の扱い |
|---|---|---|---|
| 「操作が分かりやすく、助かりました」(架空) | 利用者本人 | アンケートの原文、回答日、掲載の同意 | 原文のまま引用し、同意の範囲を超えない |
| 「初めての方にも使いやすいはずです」(架空) | 社内の担当者 | 誰の見解か、根拠となる確認の有無 | 会社の見解として書き、お客さまの声と分ける |
| 「業界でも評価が高いと聞いています」(架空) | 伝聞(出どころ不明) | 発言者、評価した主体、公表された資料 | 確認できるまで公開文から外す |
| 「問い合わせ対応が早いと好評です」(架空) | 社内の受け止 | 実際の反応の記録、件数や時期の有無 | お客さまの声とせず、事実を確認して書き直す |
表に当てはめると、確認できていない引用が見えてきます。そこは文章を整えるのではなく、その引用を外すか、確認できる範囲の表現に置き換えます。公開の前に、誰の言葉か説明できない一文が残っていないかを見る。それが、この章で確かめたいことです。
自社しか書けない内容が残っているか
事実と引用を確かめても、文がどの会社にも当てはまる一般論のままなら、読む人は自社を選ぶ理由を見つけられません。ここでは、一般論だけの文を見分け、自社の状況を足す場所を決める手順を整理します。
一般論だけの文を見分ける
一般論の文は、会社名を別の名前に置き換えても違和感なく読めてしまいます。「近年、〇〇の重要性が高まっています」「お客さま第一で取り組んでいます」といった文は、間違いではありませんが、その会社でなければ書けない内容ではありません。次の問いに答えられない文は、具体化する候補になります。
- 会社名を伏せても、同じ文が他の会社に当てはまらないか
- 数字や時期、対象が入っているか
- 誰が、どの仕事で、どう判断したかが書かれているか
- 社内の記録や実際の出来事に戻って確かめられるか
具体例を足す場所の決め方
具体例は、文全体に散らすより、読者が判断を決める箇所へ置きます。サービス紹介の冒頭、提供条件の説明の前、問い合わせを迷う場面など、読者が「自分に当てはまるか」を考える地点です。ただし、足す内容は社内の記録や実際の出来事から拾い、AIに作らせません。材料が見つからない箇所は、埋めずに削る判断も必要です。
次の表は、一般論の文と、自社の状況を足した文を並べたものです。いずれも架空の例で、実在の会社の実績ではありません。
| 一般論の文(架空の例) | 自社の状況を足した文(架空の例) | 足した情報の出どころ |
|---|---|---|
| 「お客さまの声を大切にしています」 | 「問い合わせには、翌営業日までに担当者が一次返信する体制です」 | 社内の対応手順と、実際の運用記録 |
| 「使いやすいサービスを提供しています」 | 「初回の設定は、担当者が画面を共有しながら一緒に進めます」 | 提供手順の資料と、実際に行った対応の記録 |
| 「地域に貢献しています」 | 「毎月第2土曜に、店舗の一角を地域の交流の場として開放しています」 | 実施日と、利用の記録 |
| 「安心してご利用いただけます」 | 「契約前に、解約の条件と手続きを書面でお渡ししています」 | 契約時の書面と、社内の手順 |
「自社の状況を足した文」の欄が空いたままなら、公開前に具体化するか外します。具体例を足せない箇所は、会社の説明として弱いのではなく、まだ確認できていないだけです。確認できるまで待つ、という判断も残しておきます。
確認の記録を、次の依頼に生かす
公開の可否を判断したあと、指摘をその場で終わらせると、次の下書きで同じ確認をやり直すことになります。直した結果だけを残すと、なぜ直したのかが分かりません。次に同じ文章が届いたとき、確認する側も書く側も同じ地点で迷わないよう、理由と依頼文への戻し方を残します。
修正した理由を一行で残す
記録は、直した文と元の文を並べるだけでは足りません。どの観点で止めたのかを一行添えます。書き方の例は「導入社数の時点が資料と合わないため削除」「お客さまの声の出どころが確認できないため会社の見解に変更」といったものです。判断した日付と確認した相手も添えておけば、担当が変わっても経緯をたどれます。
依頼文に戻す項目
記録は社内に置くだけでなく、次にAIへ渡す依頼文へ戻します。事実として書いてよい範囲、引用してよい声、避けたい表現、確認できていない事項の扱い。この四つを依頼文にまとめておくと、下書きの段階で同じ誤りが入りにくくなります。口頭で伝えている指摘は、依頼文に無いため再発します。
- 直した箇所に、修正した理由が一行で添えられているか
- 数値・実績・仕様の出どころと時点を、記録からたどれるか
- 引用は、誰の言葉かと掲載の範囲を説明できるか
- 次の依頼文に、書いてよい範囲と避けたい表現を反映したか
- 確認できなかった項目を、未確認のまま残していないか
印が付かない項目があれば、その項目だけを担当者へ戻し、公開の判断は保留にします。記録と依頼文がつながると、確認の時間は文章を良くする作業へ移っていきます。




