友だち数が増えてきたのに、配信する内容は毎回ほぼ同じ——そんな状態になっていないでしょうか。新商品の案内も、キャンペーンのお知らせも、営業時間の変更も、同じ文面で全員に届ける。送る側にとっては手間がかからず、抜け漏れもありません。ただ、受け取る側の状況は一人ひとり違います。昨日来店した人、三か月前に一度だけ来た人、まだ一度も来ていない人が、同じ案内を同じタイミングで読むことになります。

この記事では、配信内容を分けるために、まず何を単位として考えるのかを整理します。タグの数を増やすことから始めるのではなく、届けたい内容ごとに必要な記録を書き出し、来店履歴が手元にない状態でも今日から分けられる範囲を確認します。そのうえで、読者の状況別に配信文をどう書き分けるか、配信後に何をどの順番で見直すかまでを扱います。文中の文例は、架空の店舗設定で作った例です。

全員に同じ配信を送ると、何が起きるのか

全員に同じ内容を送る方法は、送る側にとって作りやすいものです。文面を一つ考えれば済み、誰に何を送ったかを覚えておく必要もありません。ただ、受け取る側は同じタイミングで同じ内容を読むわけではありません。昨日来た人、三か月前に一度だけ来た人、まだ一度も来ていない人が、同じ案内を並べて受け取ります。

配信が届いても、自分ごとにならない

LINEの通知は、開くかどうかを短い時間で決められます。その判断の材料は、内容の詳しさより「自分に関係があるか」です。来店の予定がない人に新商品の話を届けても、読む理由にはなりにくいのです。

来店からの日数と案内の内容がずれる例

たとえば、ランチを提供する定食店を想定します。これは説明のための架空の例で、実在する店舗の配信ではありません。週替わりメニューが出たとして、全員に同じ案内を送る場面を考えます。

  • 昨日ランチで来た人:新しいメニューは気になるが、昨日食べたばかりで、すぐ行く予定はない
  • 三か月前に一度来た人:店の存在は覚えているが、今の営業時間や席の空き方が分からない
  • 追加しただけで来店していない人:場所、初めてでも入りやすいか、注文の仕方が分からない

店舗側は「新メニューを知らせたい」と考えていますが、読者が知りたいのは「自分が次に行く理由」です。このずれは、文章の書き方や絵文字の量だけで解消できるものではありません。

一斉配信と分けた配信では、読者が受け取る情報の流れが変わります。以下は架空の定食店を想定した整理例です。
読者の状況一斉配信で届くもの分けた配信で届くもの
昨日来店した人全員向けの新メニュー案内次に試せる一品と、来店しやすい時間帯
三か月前に来店した人全員向けの新メニュー案内営業時間の変更と、久しぶりでも入りやすい席の案内
追加したが未来店の人全員向けの新メニュー案内場所、初めての注文方法、混みやすい時間

配信を増やす前に、分ける単位を探す

読み飛ばされていると感じたとき、配信の回数を増やす、文面を短くする、といった調整をしたくなります。ただ、ずれの原因が「読者の状況と内容の不一致」にあるなら、回数を増やすほど同じずれが繰り返されます。先に決めるのは、どの単位で読者を分けるかです。

分ける単位を決める順番の例です。
  1. 読者の状況を書き出す(来店前・来店直後・しばらく来ていない)
  2. その状況で知りたいことを一文ずつ書く
  3. 手元にある記録で、どこまで分けられるか確認する
  4. 分けられる範囲から、配信の単位を決める

分ける単位は、最初から細かくする必要はありません。来店の記録がなければ、友だち追加の経路だけでも手がかりになります。次の章では、タグを増やす前にこの単位をどう決めるかを整理します。

タグを増やす前に、分ける単位を決める

タグを増やせば配信先を細かく選べますが、思いつきで足していくと、意味の重なるタグや、付けた本人しか分からないタグが並びます。先に決めるのはタグの名前ではなく、どの単位で読者を分けるかです。

行動・属性・状況の三つに分けて考える

分ける手がかりは、大きく三つに整理できます。行動は「何をしたか」、属性は「ほとんど変わらない基本情報」、状況は「今どの段階にいるか」です。行動は日々更新され、属性はめったに変わりません。この違いを意識しないと、更新されないタグが残ったり、同じ意味のタグが別名で並んだりします。

来店・購入・問い合わせの記録は何が違うか

たとえば、ランチを提供する定食店を想定します。これは説明のための架空の例で、実在する店舗の記録ではありません。来店は「その日店に来た」、購入は「何を買ったか」、問い合わせは「何を知りたかったか」という違いがあります。来店だけでは興味の対象が分からず、購入だけでは来店のきっかけが分かりません。問い合わせは、まだ動いていない気持ちが表れる記録です。

架空の定食店を想定した整理例です。三つは優劣ではなく、配信の目的に合わせて使い分けます。
分け方記録する内容の例向く配信の例
行動来店した日、購入した定食、問い合わせの有無前回選んだ定食と別の一品の案内
属性来店しやすい時間帯、よく利用する店舗、希望する連絡頻度平日昼の混みにくい時間帯の案内
状況初回来店か常連か、予約を迷っている段階か初めての人向けの注文方法と入店の流れの案内

配信の目的ごとに、必要な記録を書き出す

タグは、配信したい内容から逆算して選びます。「新商品を知らせたい」のか「しばらく来ていない人の背中を押したい」のかで、必要な記録は変わります。目的を一文で書き、その配信で読者に決めてほしい行動を添えると、記録は絞れます。

  • 初めての人に注文方法を知ってほしい → 友だち追加の経路、初回案内を送った日
  • 前回と同じ商品を買った人に次の候補を伝えたい → 購入した商品、購入日
  • 問い合わせ後に動いていない人を後押ししたい → 問い合わせの内容、その後の反応

一つの目的に記録を四つも五つも求めないことも大切です。手元にない記録を前提にすると、配信を作るたびに確認作業が増え、続きません。今ある記録だけで成立する目的から始めます。

タグの名前を、担当者以外が読んでも分かるようにする

名前を付けるときの基準は、配信を作る人が画面を見た瞬間に意味を思い出せるかどうかです。「A」「その他」「要対応」では、引き継いだ人が判断に迷います。

  • 種類を先頭に置く:「行動_購入_焼き魚定食」「状況_問い合わせ後_未予約」
  • 数字だけで終わらせず、単位を添える:「来店_2026-10」「来店回数_3回以上」
  • 使わないタグを消す前提で、作る数を絞る

タグは、配信を分けるための道具です。名前を整えたら、次は来店記録が手元にない状態で、どこまで分けられるかを確認します。

来店記録が取れていない状態から始める

来店日時を自動で記録する仕組みがない、という状態は珍しくありません。予約表とレジが別々、会員証もない。それでも、友だち追加の経路と、手元で付けられるタグがあれば、配信を分ける第一歩は作れます。ここでは、今日から分けられる範囲と、手動で記録するときに気をつける点を整理します。

友だち追加の経路で分ける

友だち追加には、必ずきっかけがあります。店頭のポップのQRコード、店舗のWebサイト、SNSのプロフィール、予約の完了画面。追加された場所は、その人が店と出会った場面を示します。来店済みかどうかまでは分かりませんが、「店の前を通って追加した人」と「Webで調べて追加した人」とでは、次に必要になる情報が違います。追加用のQRコードやリンクを経路ごとに分けておくと、あとから見分けやすくなります。

追加経路からタグが付き、配信内容が決まるまでの流れです。架空の定食店を想定した例で、実際の運用結果ではありません。
  1. 追加された場所を記録する(店頭QR・Web・SNSなど)
  2. 経路ごとにタグを付ける(経路_店頭、経路_Web)
  3. その経路の人が次に知りたいことを書き出す
  4. 経路を選んで配信を送る

手動でタグを付ける運用と、その限界

来店の記録が取れない場合は、レジや予約表を見ながら、気づいた人がタグを付ける運用になります。ただ、手動には限界があります。混雑している時間帯ほど付け忘れが起き、担当者が変わると判断の基準も揺れます。付けた日と実際の来店日がずれると、「しばらく来ていない人」を選ぶ精度も落ちます。手動で続けるなら、付ける項目を二つか三つに絞り、日付ではなく月まで、回数ではなく有無で残すところから始めます。

手動運用を始める前に決めておく項目の例です。記入例は架空の定食店を想定したもので、実在する店舗の運用ではありません。
確認すること決めておく内容記入例(架空の店舗)
誰が付けるかレジ担当か、閉店後の締め作業か閉店後に当日分をまとめて確認する
いつ付けるか当日中か、翌営業日までか来店したその日のうちに付ける
どの粒度で残すか日付か月か、回数か有無か来店_2026-10 のように月まで残す
迷ったときの扱い付けないか、要確認として残すか判断できない場合は未確認として残す
見直す頻度週1回か月1回か週1回、付け忘れがないかを見る

手動の記録は、件数が増えるほど精度が落ちます。すべてを残そうとせず、配信を分けるのに使う項目だけを決めておくほうが、続けやすくなります。次は、こうして分けた相手に、状況別で何を書くかを整理します。

配信文を、読者の状況別に書き分ける

同じ店の同じ商品でも、読者がどの段階にいるかで、伝えるべき情報は変わります。ここでは、ランチを提供する定食店を想定した架空の例で、三つの状況の書き分けを整理します。実在する店舗の文面ではなく、組み立て方を示すための例です。

初めての人に送る文

まだ一度も来ていない人に必要なのは、商品の魅力より「自分が行けるかどうか」の判断材料です。場所、入りやすさ、注文の流れ。初めての来店で迷いやすい点を先に置き、商品の説明はそのあとに続けます。特別な言葉を重ねるより、当日の自分を想像できる情報が役立ちます。

一度利用した人に送る文

来たことがある人には、前回と同じ案内を繰り返さず、次に試せる選択肢を渡します。前回何を選んだかを断定できない場合は、「前に召し上がった方も」ではなく「定番のほかに」といった書き方にすると、外れても気になりません。来店日を決めつけない表現が安全です。

問い合わせたが動いていない人に送る文

問い合わせのあとに動いていない人は、返事を待っているのではなく、判断が止まっている状態かもしれません。問い合わせ内容をそのまま繰り返すと、催促に読めます。条件や選択肢をもう一度短く示し、今は決めなくてよいと添えると、返信しやすくなります。

次の表は、架空の定食店を想定して作った文例の対比です。実在する店舗の配信文ではありません。

読者の状況伝える中心文例(架空の店舗)避けたい書き方
初めての人行けるかどうかの判断材料「初めての方へ。入口は駅側の正面です。ランチは先に券を買う形で、迷ったら定番の焼き魚定食をどうぞ」商品名だけを並べ、場所や注文方法に触れない
一度利用した人次に試せる選択肢「前回と違う一品を。焼き魚のほかに、豚汁定食もご用意しています。平日の13時台は席に余裕があります」「また来てください」だけで終わらせる
問い合わせ後、動いていない人止まっている理由への配慮「先日お問い合わせいただいた件です。平日昼の席は、前日までならご相談いただけます。今すぐでなくても大丈夫です」同じ説明の再送や、期限だけを強調する

三つに共通するのは、相手の状況を決めつけないことです。来店したかどうかを断定できない相手には、断定しない書き方を選びます。分けた配信でも、文面が同じなら受け取られ方は変わりません。次は、送ったあとに何をどの順番で見直すかを整理します。

配信後の見直しは、数字の前に文面を確認する

配信を送ったあと、管理画面の数字を開き、開封が少ないと文面を書き換える。その繰り返しでは、何がずれていたのか分からないまま、毎回書き直すことになります。数字の前に、配信の設計そのものを順番に確かめます。

開封やクリックの前に見る三つの点

結果が伸びないとき、最初に疑うのは言い回しになりがちです。ただ、読み飛ばしの原因は文面の手前にあります。次の三つを、数字を見る前に確認します。

  • 宛先の単位は、伝えたい内容と合っていたか(新メニューの案内を、来店直後の人と未来店の人へ同じ文面で送っていないか)
  • 送った時刻は、読者が画面を見る時間帯と合っていたか(ランチの案内を前日の夜に送るか、当日の朝に送るか)
  • 最初の一文は、読者の状況から始まっていたか(「新メニューのお知らせです」ではなく「昨日ランチに来られた方へ」)

配信を止める、減らす判断の基準

架空の定食店で、週替わりメニューの配信を三回続けた場面を考えます。開封も来店も動かないとき、文面を直す前に、この案内を全員に送る必要があったかを見直します。目的が二つ以上に分かれる配信や、宛先を変えても文面が変わらない配信は、回数を減らす候補です。

配信ごとの確認チェックリスト。記入例は架空の定食店を想定したもので、実在する店舗の運用ではありません。
確認すること見る内容の例(架空の店舗)判断の例
この配信で決めてほしい行動は一つか週替わりメニューを見て来てほしいのか、営業時間の変更を知ってほしいのか二つ以上あるなら、配信を分ける
宛先を変えると文面も変わるか未来店の人と常連で、同じ書き出しになっていないか変わらないなら分ける意味は薄いので、一斉配信に戻す
送る理由を一文で説明できるか「今週の魚が変わったから」と言えるか言えない回は、送らずに次の案内へ回す
返信や来店に答えられる体制があるか席の案内や質問への返事を、その週に用意できるか用意できない回は、案内を絞るか延期する

見直す順番は、宛先、時刻、最初の一文、そしてその配信を続けるかどうかです。数字は、この順番で確かめたあとの材料にします。分ける単位を決め、記録を残し、状況別に書き分け、送ったあとに順番で見直す。この流れが一度回ると、次の配信で変える場所は一つに絞られます。